有限会社言問学舎/失われた三陸の鉄路に思いをはせ、鉄道の歴史をたたえる本でもあります。
年
書名: たまきはる海のいのちを-三陸の鉄路よ永遠に
ISBN: 978-4-9910776-4-7
著者: 小田原漂情
B6判: 総ページ数272ページ うちカラー口絵32ページ
定価: 本体1600円 + 税
3月中旬。東日本大震災発生翌年の2012年から数年間、毎年この3月中旬から4月上旬にかけて、津波の被害を受けて運休となっていた三陸沿岸の鉄道各線が、逐次運転再開を果たして行きました。復旧順に記すと、次の通りです(2011年当年度の復旧は割愛します)。
2012年3月17日 仙石線 陸前小野駅 – 矢本駅間
石巻線 石巻駅 – 渡波駅間
4月1日 三陸鉄道北リアス線 田野畑‐陸中野田間
2013年3月16日 石巻線渡波-浦宿間
4月3日 三陸鉄道南リアス線盛‐吉浜間
2014年4月5日 三陸鉄道南リアス線 吉浜‐釜石間 南リアス線全線運転再開
4月6日 三陸鉄道北リアス線 小本‐田野畑間 北リアス線全線運転再開
2015年4月6日 石巻線浦宿-女川間 石巻線全線運転再開
5月30日 仙石線高城町‐陸前小野間 仙石線全線運転再開
および仙石東北ライン開業
本書は執筆期間が2012年9月~2015年4月でしたから、2013年、14年、15年の春には、毎年執筆中や脱稿時にいずれかの線区が運転再開を果たしており、まさに三陸沿岸の鉄道各線の運転再開と同時進行で書きすすめた小説です。このことは本文に添えて、「発表時付記一覧」として掲載してあります。
二.ゆくりなき会い 『Web頌』第3号(2013年4月6日)に掲載
付記二. 東日本大震災で大きな被害を受けた仙石線、石巻線ですが、本年3月16日より、石巻線渡波‐浦宿(うらしゅく)(女川のひとつ手前、万石浦の北東端に臨む駅)間の運転が再開されました。また三陸鉄道南リアス線盛‐吉浜間も、4月3日に運転再開が成りました。
四.春を呼ぶ風 『Web頌』第5号(2014年4月7日)に掲載
付記(抜粋) 奇しくも脱稿の日(4月6日)に、三陸鉄道北リアス線が全線復旧し、前日の南リアス線とあわせて、同鉄道の全線復旧が成りました。関係各位の筆舌に尽くしがたいご努力に、敬意を表します。そして改めて幾重にも、犠牲となられた方々のご冥福を、お祈り致します。
六.志津川の海 『Web頌』第7号(2015年4月6日)に掲載
付記(抜粋) 三陸沿岸の鉄道線の復旧ということで言えば、ちょうど小牛田から志津川へ向かうくだりを書いている3月21日に(当時記載)、石巻線が終点の女川まで全線開通し、また第一作、第二作で描いた仙石線も、間もなくの全線運転再開が、決まっています。今年復旧の両区間は、いずれも地盤のかさ上げがなされ、移設のための新駅・新線建設が行なわれました。(後略)
本の中には、2011年3月11日の3353S列車が4月に入ってから移動、留置された希少な写真も掲載してあります。
三陸鉄道北リアス線、南リアス線は、2011年の震災当年度に。別して目をみはるように早急な運転再開をすすめて行きました。このことは次回、JR旧山田線区間を編入し盛‐久慈間のリアス線として長い区間の運転をするに至った経緯と合わせ、改めてご紹介したいと思います。
本文中には、廃止された気仙沼線陸前横山‐陸前戸倉間にあった横山トンネル(BRT専用道上に現存)についても、次のように描写しています。
「今度は単線のトンネルだから、もっと迫力があるよ。特に長いトンネルの時は、窓の外を見ない方がいいかもね。」
「いやだ、おどかさないで。そのトンネルの時は、教えてね。」
「ああ、もちろんだよ。」
柳津の次の陸前横山駅を出て、その長いトンネルをくぐる間、早希子は言葉少なに、英介の方を向いていた。英介は、夏場は窓を全開にしてこうしたトンネルの通過を楽しんだ学生時代を思い出したが、やはり今、そんな話を早希子にする気にはなれなかった。ただ早希子が心細くないように、他愛のない話をしながら、トンネル通過を心待ちにした。
トンネルを抜けると、行く手の視界が一気に明るくなった。 (後略)
横山トンネル?
ほかにも仙石線、石巻線、気仙沼線、大船渡線などの、1960年代や70年代のものも含めた貴重な鉄道風景、沿岸の風景の写真を、多数掲載しています(カラー口絵32ページ)。かつての三陸の様子をふりかえることのできる、資料としても高い価値のある1冊です。
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