静岡大学情報学部がBBQから協調性の基盤を解明するためのクラウドファンディングを開始
この記事の目次
BBQから協調性の基盤を解明するためにクラウドファンディングを開始
スポーツ科学や生物学との接続を実現する認知科学研究
本研究では身近な社会活動のフィールド計測から、うまくいくグループの特徴を統計的に検討することを目的とします。今回はBBQを題材に、トラブルへの対処等に着目します。完璧に進めることは難しく、揺れ動く環境や想定外の出来事により悪い方向へ傾きかけた状況を立ち直らせている可能性があります。リアリティのある定量的なデータから「適材適所の役割配置」や「状況に応じたリーダーの必要性」といった実感しやすい、うまくいくグループのヒントを提供できるかもしれません。
挑戦的な取り組みのため探索的に研究を進めること、さらに設備や食材の調達など通常の研究費では支出が難しい側面があることから、柔軟に使用できる予算を確保するためにクラウドファンディングに挑戦することにしました。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
クラウドファンディングの概要
プロジェクトタイトル:BBQから協調性の基盤を解明する!
- ページURL:https://academist-cf.com/projects/279
- 目標金額:60万円(All or Nothing形式)※募集期間内に集まった寄付が目標金額を超えた場合のみ受け取ることができる仕組み
- 募集期間:2023年1月25日(水)10時~3月23日(木)17時
- 資金の使途:設備や食材の調達、分析の下処理などに協力いただいたアルバイトへの謝金、論文投稿に向けた英文校正費や掲載費等
研究概要
本研究では、身近な社会活動をフィールド計測して道具や個人の位置、会話を記録するだけでなくアンケート調査も行い、うまくいくグループの特徴を統計的に検討することを目的とします。その際、トラブルへの対処等に着目します。完璧に進めることは難しく、揺れ動く環境や想定外の出来事により悪い方向へ傾きかけた状況を立ち直らせている可能性があります。
今回、身近な社会活動としてBBQに注目しました。BBQは炭に火がつかないなどのトラブルが起こりやすく、お昼等の限られた時間で楽しく食事するためには自ずと分業が行われ、周囲の状況を理解する必要があると考えられます。「分業」、「周囲の状況理解」、「トラブルへの対処」は集団スポーツと類似する一方で、環境が自然で役割が未決定な状態から始まり、個々の自由度がより高くノルマが必ずしも明確ではない点が異なり、協調性を学術的に検討するうえでBBQは興味深い題材と言えます。
共同研究者
- 竹内 勇剛(静岡大学創造科学技術大学院・教授)、山田 雅敏(常葉大学経営学部・准教授)
- 藤井 慶輔(名古屋大学大学院情報学研究科・准教授)、坂本 孝丈(静岡大学大学教育センター・助教)
研究背景
日常のなかで、このメンバーならできると思ったはずが進まなかったり、自分と隣のグループで進捗具合が異なったりした経験があるかもしれません。当研究グループは経験年数だけでは語れない協調性のメカニズムを、分業やインタラクション(相互作用)の観点から明らかにしていきます。
認知科学ではこれまで役割分担や交替、これらによる他者視点の取得が協調性で重要であることが示唆されています[林+07; Shirouzu+02]。しかし、机上のテスト課題を用いた思考に重きが置かれ、身体的なインタラクションが十分に考慮されていない点が検討事項として挙げられます。また、実験室実験やエスノグラフィーといった認知科学の主なアプローチでは、科学的に説明しやすい定量的な検証と状況のリアリティの間でトレードオフが生じるため、フィールド計測で問題のクリアを図ります。
[林+07] 林・三輪・森田, 異なる視点に基づく協同問題解決に関する実験的検討, 認知科学, 2007
[Shirouzu+02] Shirouzu, Miyake, & Masukawa, Cognitively active externalization for situated reflection, 2002
今後の展望と波及効果
4、5名を1組に設営や調理、食事、片づけといったBBQの活動過程を接地・俯瞰撮影して10組ほど観測します。さらに、活動を振り返るアンケート調査も実施します。接地撮影の動画から会話や行動を参考に、トラブルや各メンバーの役割に関する注釈を付与します。そして、短時間で調理できた、あるいはアンケートで楽しく活動できたと回答したグループの分業やインタラクションに関する仮説を設定します。その後、俯瞰撮影の動画で取得した道具や個人の位置の時系列データから集団の動きを解析して仮説を検証します。うまくいくグループでは正常時はお互いに任せて、トラブル時のみリーダーのような存在が役割を動的に配置させる特徴がみられるかもしれません。トラブルに関連するグループの距離感や、慌て度合いを表す指標から捉えられる可能性があります。
スポーツ科学や生物学のように集団の動きを分析し、会話やアンケートと対応づけて分業やインタラクションを議論することで認知科学や心理学との接続が実現して協調性研究の発展が期待されます。
<以上>
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